冬の庭を彩る定番植物の葉牡丹。その美しい姿を、今年は種から育ててみませんか?
「葉牡丹の種まき時期はいつだろう?」という基本的な疑問から、種まきが遅い場合や10月になってしまった時の対処法、人気のミニ葉牡丹の育て方まで、多くの方が気になるポイントがあります。また、種まき後の徒長に関する失敗や、発芽したらどうすれば良いのかという不安も尽きません。
この記事では、種まきの基本はもちろん、シーズン後に植えっぱなしにした株の管理、春の切り戻し方法、簡単な挿し木での育て方、さらにはユニークな踊り葉牡丹の楽しみ方や、来年につなげるための種の取り方まで、葉牡丹栽培の全てを網羅的に解説します。この記事を読べば、初心者の方でも自信を持って葉牡丹栽培をスタートできるはずです。
この記事のポイント
- 葉牡丹の最適な種まき時期と地域ごとの違い
- 失敗しない種まきの具体的な手順と発芽後の管理方法
- シーズン後の切り戻しや挿し木による増やし方
- 踊り葉牡丹の仕立て方や自家採種の方法
葉牡丹の種まき時期と基本の育て方

園芸の教科書・イメージ
冬の寂しくなりがちな花壇や寄せ植えを、鮮やかな色彩で彩ってくれる葉牡丹。
その美しい姿を苗からではなく、種から育ててみたいと考える方も多いのではないでしょうか。種から育てることで、発芽から成長、そして色づき始めるまでの全過程を楽しむことができ、愛着も一層深まります。
しかし、葉牡丹の栽培で最も重要とも言えるのが種まき時期の見極めです。発芽適温が20℃前後であるため、気温が高い夏に作業を行う必要がありますが、まく時期が早すぎても遅すぎても、株が徒長したり、葉の巻きが悪くなったりと、理想の姿に育ちにくくなります。
前半では、地域ごとの最適な種まき時期の目安から、失敗しないための具体的な種まきの方法、発芽後の管理で注意したい徒長の防ぎ方まで、基本を徹底解説。さらに、時期を逃してしまった場合の対処法や、可愛らしいミニ葉牡丹の育て方にも触れ、あなたの葉牡丹栽培が成功へと向かうよう丁寧にガイドします。
- 葉牡丹の種はいつまくのが最適?
- 失敗しない葉牡丹の種まきの方法は?
- 発芽したらどうすればいい?種まき後の徒長を防ぐコツ
- 種まきが遅い場合や10月でも大丈夫?
- ミニ葉牡丹の種まきの方法と育て方
葉牡丹の種はいつまくのが最適?
葉牡丹の種まきは、一般的に夏の7月中旬から8月中旬が最適な時期とされています。
これは、葉牡丹の生育サイクルに深く関係しています。まず、発芽には20℃前後という比較的安定した温度が必要であり、この条件を満たすのが真夏を少し過ぎた頃だからです。
さらに重要なのが、葉牡丹が美しく色づくメカニズムです。葉牡丹は、秋が深まり気温が15℃以下になる日が続くと、寒さから身を守るためにアントシアニンという色素を生成し始め、これが鮮やかな発色に繋がります。そのため、色づきが始まる前に、株としてしっかりと成長するための期間が必要不可欠なのです。
大手種苗メーカーであるサカタのタネの公式サイトでも、温暖地では7月中旬~8月中旬が種まき適期と紹介されています(参照:サカタのタネ公式サイト)。早くまきすぎると、夏の厳しい暑さで苗が疲弊してしまったり、葉の枚数が増えすぎて中心部が盛り上がる塔立ちのような状態になり、美しいロゼット状にならないことがあります。
逆に、種まきが遅すぎると、葉が十分に展開しないまま低温期に入ってしまうため、葉数が少なくボリュームに欠ける小さな株になってしまいます。

お住まいの地域や目指すサイズによっても最適な時期は変動します。以下の栽培カレンダーを目安に、ご自身の計画に最適なタイミングを見つけてください。
ポイント
葉牡丹は秋の低温に反応して色づきます。この性質を理解し、お住まいの地域で霜が降り始める時期から逆算して種まき時期を決めると、最高のタイミングで美しい姿を楽しむことができます。
地域区分 | 代表的な地域 | 種まき時期の目安 | 特徴とポイント |
---|---|---|---|
寒冷地 | 北海道・東北・高冷地 | 7月上旬~7月下旬 | 冬の到来が早いため、早めに種まきをして生育期間を確保します。夏の冷涼な気候を活かして、じっくりと大株に育てることが可能です。 |
中間地 | 関東・東海・関西など | 7月中旬~8月中旬 | 最も一般的な時期です。特に関東平野部ではお盆(8月中旬)前後が一つの目安とされています。バランスの良い標準的な株が育ちます。 |
暖地 | 四国・九州・沖縄 | 8月下旬~9月上旬 | 残暑が厳しく気温が下がるのが遅いため、遅めにまくことで高温による徒長や生育不良を防ぎます。 |
育てたいサイズで時期を調整する
葉牡丹は、種をまく時期を意図的にずらすことで、株の大きさをある程度コントロールできます。これは、色づきが始まるまでの「生育期間の長さ」が、最終的な葉の枚数と株の大きさに直結するためです。
例えば、お正月の門松や花壇の主役に使うような、直径30cmを超える豪華な大株を目指すのであれば、中間地の場合でも7月中旬から下旬には種まきを済ませ、長い生育期間を確保します。
一方、ビオラなどと合わせる寄せ植え用の手頃な中株や、可愛らしいミニ葉牡丹にしたい場合は、8月下旬から9月中旬にあえて遅くまくことで、葉数が少なくコンパクトな株に仕立てることができます。
失敗しない葉牡丹の種まきの方法は?

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葉牡丹の種まきを成功させる結論は、清潔な用土を使い、適切な水分管理と覆土の薄さを徹底することです。
種まきを行う夏は、高温多湿で病原菌が最も活発になる季節。前述の通り、サカタのタネの公式サイトでも、カビなどが原因で苗が根元から腐ってしまう立枯病を防ぐために、必ず新品の清潔な用土を使うよう推奨されています。使い古しの土は、病原菌だけでなく害虫の卵が潜んでいる可能性もあるため避けましょう。
また、覆土の厚さも発芽を左右する重要な要素です。土を厚くかけすぎると、種が呼吸できずに発芽率が落ちるだけでなく、地温が上がりすぎて発芽に適した温度を保てなくなる原因にもなります。種が隠れるか隠れないかの、ごく薄い覆土を心がけてください。

具体的な種まきの手順
1. 用土と資材の準備
育苗には、市販の種まき専用培養土を使用するのが最も手軽で確実です。もし自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)7:ピートモス3などの水はけと水持ちのバランスが良い配合がおすすめです。育苗箱やセルトレイ、ビニールポットなど、管理しやすいものを用意しましょう。
2. 種まき
用土をトレイに入れたら、土の表面を板などで軽くならして平らにします。その後、5cm程度の間隔で深さ5mmほどの浅い溝を作り、その溝に沿って種同士が重ならないようにすじまきをします。セルトレイの場合は、各セルの中央に1〜2粒ずつ点まきすると、後の間引きが楽になります。
3. 覆土
まいた種の上から、バーミキュライトや目の細かいふるいにかけた用土を薄くかけます。目安は種がやっと見えなくなる程度(3mm以下)です。かけ終わったら、手のひらや板で軽く鎮圧し、種と土を密着させましょう。
4. 水やり
最初の水やりは、種が流れないように底面給水が最適です。育苗箱より一回り大きな容器に水を張り、そこに育苗箱を静かに浸します。土の表面まで水が染み渡ったら引き上げます。底面給水が難しい場合は、目の細かいハス口のじょうろか霧吹きで、土をえぐらないように優しく水を与えます。
5. 発芽までの管理
種まき後は、直射日光の当たらない、家の北側や大きな樹木の下など、風通しの良い明るい日陰で管理します。完全に真っ暗な場所は徒長の原因になるため避けましょう。土の表面が乾かないよう注意していれば、通常3日〜5日ほどで発芽が始まります。
発芽したらどうすればいい?種まき後の徒長を防ぐコツ

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葉牡丹の芽が無事に出始めたら、ためらわずに、すぐに日当たりの良い場所へ移動させること。これが、その後の生育を決定づける最も重要なポイントです。
発芽したばかりの双葉は、光を求めて上へ伸びようとする性質が非常に強く、日陰に置き続けると、わずか1日で茎だけがひょろひょろと間延びした徒長苗になってしまいます。
タキイ種苗の栽培マニュアルにおいても、この発芽直後の迅速な対応が、がっしりとした良質な苗を作る秘訣として紹介されています(参照:タキイネット通販 公式サイト)。徒長した苗は、その後の生育が遅れるだけでなく、病気や害虫への抵抗力も弱くなるため、可能な限り避けなければなりません。
注意ポイント
「全部の芽が揃ってから…」と待っていると、最初に出た芽が徒長してしまいます。「全体の2〜3割が発芽したかな?」と感じた時点で、すぐに管理場所を移動する判断が、健康な苗を育てる上で非常に重要です。
もし徒長してしまったら?リカバリー方法
もし少し徒長させてしまった場合でも、諦める必要はありません。本葉が出る頃に、苗が倒れないように株元に丁寧に土を寄せる土寄せを行うことで、ある程度のリカバリーが可能です。また、後の鉢上げの際に、少し深めに植え付けることでも、不安定な茎を支えることができます。
発芽後の具体的な管理
水やり
日当たりの良い場所へ移した後は、水やりの頻度を少し控えます。土の表面が乾いているのを確認してから、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えるのが基本です。
常に土が湿っている状態は、徒長を助長するため、「乾いたら、やる」のメリハリをつけましょう。
間引き
本葉が出始め、隣の苗と葉が触れ合うようになったら間引きを行います。
生育の悪い苗や、茎が細すぎる苗を根元からハサミで切り取ります。引き抜くと残したい苗の根を傷める可能性があるため、ハサミで切るのがおすすめです。最終的に、本葉が2〜3枚になる頃までに1本立ちになるようにします。
育苗と鉢上げ
本葉が2〜4枚になったら、育苗用のポリポット(直径7.5〜9cm)に1本ずつ植え替える鉢上げを行います。
根を傷つけないように優しく掘り上げ、新しいポットに植え付けます。この作業により、根が自由に伸びるスペースができ、株全体の成長が促進されます。鉢上げから約1ヶ月後、ポットの底から根が見えるようになったら、プランターや花壇への定植のタイミングです。
種まきが遅い場合や10月でも大丈夫?

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結論から言うと、葉牡丹の種まきが9月や10月と適期より遅れてしまっても、育てること自体は十分に可能です。
ただし、その場合、最終的な株の姿は本来の大きさよりもかなりコンパクトになります。これは、葉牡丹が大きく葉を広げるためには一定の生育期間と、その間の日照時間や温度(積算温度)が必要だからです。
種まきが遅れると、株が十分に大きく育つ前に、葉が色づき始める低温期に突入してしまうため、結果として葉数が少ない小ぶりの株に仕上がります。
しかし、これは一概に失敗というわけではありません。むしろ、この性質を逆手にとった楽しみ方もあります。

メリット | デメリット | |
---|---|---|
遅まきの特徴 | 株がコンパクトにまとまるため、ビオラなど他の草花との寄せ植えに使いやすい。また、複数の苗を密集させて植え、ミニブーケのように見せることもできる。 | 単体で植えるとボリュームに欠け、寂しい印象になることがある。また、生育不良だと葉の発色が薄くなる場合もある。 |
遅まきした場合の管理ポイント
種まきが遅れた場合は、短い生育期間でいかに健康な株に育てるかがポイントになります。
肥料管理
通常、葉の発色を良くするために10月以降は肥料を控えます。しかし、遅まきの場合は生育期間が短いため、株の成長を少しでも促す必要があります。
生育期に応じた追肥が生育を助けるので、10月上旬頃まで週に1回程度、規定より薄めた液体肥料を与えると効果的です。ただし、チッソ分が多すぎると色づきが悪くなるため、リン酸・カリが多めの肥料を選ぶと良いでしょう。
植え付け
株が小さいままなので、花壇やプランターに植え付ける際は、株同士の間隔を通常よりも狭く(15cm程度)すると、こんもりとした見栄えになります。また、他の植物と組み合わせる際は、葉牡丹の葉色(白系か赤系か)と相性の良い色の花を選ぶと、寄せ植え全体が美しくまとまります。
ミニ葉牡丹の種まきの方法と育て方

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手のひらサイズで愛らしいミニ葉牡丹を種から育てるには、「品種選び」「栽培環境」「薬剤の使用」という3つのアプローチがあります。
最も基本的な方法は、あえて生育に制限をかける栽培環境を作ることです。
通常の時期に種をまき、大きな鉢で栄養豊富に育てると、どうしても株は大きく育ちます。そこで、種まきを8月下旬から9月中旬に遅らせ、さらに直径9cm程度の小さなポットで育てることで、根の張りを物理的に制限し、コンパクトな状態を維持させます。
水やりも、土が乾いてからさらに少し待つくらい「スパルタ気味」に管理するのも、小さく育てるコツの一つです。
品種選びと矮化剤の使用
品種選び
近年では、もともと草丈が大きくならず、コンパクトにまとまる性質を持つ矮性(わいせい)品種も多く開発されています。「F1つぐみ」シリーズなどがその代表例で、こうした品種を選べば、特別な技術を使わなくてもミニ葉牡丹を作りやすくなります。
矮化剤を使用する方法
より確実に、そして葉が密に詰まった美しい形のミニ葉牡丹に仕上げたい場合は、矮化剤(わいかざい)という植物成長調整剤を使用します。
家庭園芸用ではビーナイン水溶剤が一般的で、植物の伸長を抑制し節間のつまったコンパクトな草姿に仕上げる効果があるとされています。これを規定倍率(200〜400倍)に希釈したものを、双葉が開いた直後から数回にわたり茎葉に散布します。これにより、節間が詰まり、締まった草姿に仕上げることが可能です。
注意ポイント
矮化剤を使用する際は、いくつかの注意点があります。まず、必ず規定の希釈倍率を守り、かけすぎないこと。また、高温時に散布すると薬害が出やすいため、涼しい朝方や夕方に行いましょう。小さく育てる場合でも、肥料が切れると葉色が悪くなるため、緩効性肥料を元肥として少量施し、様子を見ながら液肥で補うことが大切です。
葉牡丹の種まき時期を終えた後のお手入れは?

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冬から春にかけて私たちの目を楽しませてくれた葉牡丹。暖かくなると中心から花茎が伸びて「とう立ち」が始まり、観賞期が終わったと感じる方も多いでしょう。
多くの場合、ここで一年草として扱われ、処分されてしまいがちですが、実は葉牡丹の魅力はそれで終わりではありません。適切な手入れを施すことで、初夏には可愛らしい菜の花に似た花を咲かせ、その後もユニークな姿で長く楽しむことができるのです。
後半では、観賞期を終えた葉牡丹を植えっぱなしで管理する方法から、来シーズンのための切り戻しや挿し木といったテクニック、そして茎がくねくねと伸びる姿が魅力的な踊り葉牡丹の仕立て方まで、一歩進んだ楽しみ方をご紹介します。
さらに、来年へと命を繋ぐための種の取り方も解説。葉牡丹を一年限りで終わらせず、そのライフサイクルを余すところなく味わうための知識とアイデアがここにあります。
- 植えっぱなしで翌年も楽しむには?
- 姿を整える切り戻し方法
- 簡単な挿し木での育て方
- 踊り葉牡丹に挑戦してみよう
- 来年のための種の取り方と保存法
- 葉牡丹の種まき時期を知り栽培を楽しもう
植えっぱなしで翌年も楽しむには?

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観賞期が終わった葉牡丹を植えっぱなしにしておくと、冬の色づいた葉とは全く異なる、春らしい菜の花に似た美しい花を楽しむことができます。
葉牡丹はキャベツやブロッコリーと同じアブラナ科の植物であり、冬の寒さを経験した後に暖かくなると、子孫を残すために花を咲かせるという本能を持っています。3月頃になると、色づいた葉の中心からにょきにょきと花茎が伸びてくる「とう立ち(抽苔)」という現象が始まります。そして4月から5月にかけて、その先端に黄色い十字型の小花をたくさん咲かせ、春の訪れを告げてくれるでしょう。
ただし、花が咲き終わった後の株を夏越しさせて、再び冬に葉を美しく色づかせるのは、日本の高温多湿な気候では非常に難易度が高いのが実情です。
葉牡丹は一年草として扱われることが多く、梅雨の長雨による根腐れや、夏の厳しい暑さで株が弱り枯れてしまいます。そのため、「春の花を楽しむまで」と割り切って管理するのが一般的です。
注意ポイント
夏越しに挑戦する場合のコツ
もし夏越しに挑戦するなら、いくつかの工夫が必要です。まず、地植えよりも鉢植えの方が管理しやすくなります。梅雨時期は軒下など雨が直接当たらない場所へ移動させましょう。夏本番は、直射日光を避けた、家の北側や落葉樹の下など風通しの良い半日陰で管理します。水やりは、土の表面が完全に乾いてからさらに1〜2日待つくらい乾燥気味にすることで、根腐れのリスクを減らすことができます。
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姿を整える切り戻し方法

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春に咲いた花を楽しんだ後、適切なタイミングと位置で切り戻し(剪定)を行うことが、株の姿を整え、新たな楽しみ方へと繋げるための重要な作業となります。
この作業の主な目的は、花を咲かせることに使われた株のエネルギーを、新芽(脇芽)の成長へと振り向けることです。これにより、次に紹介する踊り葉牡丹の準備をしたり、切り取った茎を挿し木に利用したりできます。
切り戻しの最適なタイミングは、花が7〜8割咲き終わり、種ができるサヤが本格的に膨らみ始める前です。この時期であれば、まだ株に体力が残っており、新しい芽が吹きやすくなります。

切り戻しの具体的な手順
1. 切る位置の確認
まず、伸びた花茎の株元をよく観察し、葉の付け根にある小さな新芽(脇芽)を探します。この脇芽が、次に成長してくる芽になります。切り戻しでは、この脇芽をいくつか残して切ることが重要です。
2. 道具の準備
病気が入るのを防ぐため、必ず清潔なハサミや剪定バサミを使用してください。使用前にアルコールで拭くなど、殺菌しておくとより安全です。
3. カットする
株元から数えて2〜3節(葉がついていた跡)の上、あるいは確認した脇芽の少し上で、茎を水平にカットします。あまり高い位置で切ると樹形が乱れ、低すぎると脇芽がなく枯れてしまう可能性があるので注意しましょう。
切り戻し後の管理
切り戻した後は、株が新しい芽を出すエネルギーを必要とします。土の表面が乾いたら水やりを続け、2週間に1回程度、薄めた液体肥料を与えて脇芽の成長をサポートしましょう。うまくいけば、数週間で切り口の下から新しい芽が元気に伸びてきます。
簡単な挿し木での育て方

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葉牡丹は挿し木によって、親株と全く同じ性質を持つクローンを手軽に増やすことが可能です。特に、春の切り戻しで出た茎を再利用するのが最も効率的で、園芸の楽しみを広げてくれます。
挿し木に最適な時期は、気温が20℃〜25℃に安定してくる5月下旬から梅雨の時期(6月下旬頃)です。この時期は空中湿度が高く、挿し穂が乾燥しにくいため、発根の成功率がぐっと高まります。
挿し木を成功させる詳細な手順
- 挿し穂の準備
切り戻した茎の中から、鉛筆くらいの太さで元気の良い部分を選び、先端から10〜15cmの長さでカットします。これが「挿し穂」となります。 - 水あげ
挿し穂の下半分の葉を丁寧に取り除きます。これは、土に埋まる部分の腐敗を防ぎ、葉からの水分蒸散を抑えるためです。その後、切り口をカッターナイフなどで鋭く斜めに切り直し、吸水面積を広げます。コップなどに入れた水に切り口を1〜2時間浸し、しっかりと水を吸わせましょう。 - 発根促進剤の利用
必須ではありませんが、切り口に市販の「発根促進剤」を薄くまぶすことで、発根がスムーズになり成功率が格段に上がります。 - 土に挿す
赤玉土(小粒)やバーミキュライト、挿し木専用土など、肥料分のない清潔な用土をポットに入れます。あらかじめ土を湿らせておき、箸などで穴を開けてから、挿し穂の長さの3分の1から半分程度が埋まるように優しく挿します。 - 挿し木後の管理
たっぷりと水を与えた後は、直射日光の当たらない明るい日陰で、土が乾かないように管理します。ビニール袋をふんわりとかけて湿度を保つのも効果的です。1ヶ月ほどで発根し、新芽が動き始めたら成功です。
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踊り葉牡丹に挑戦してみよう

園芸の教科書・イメージ
踊り葉牡丹とは、冬のコンパクトな姿から一変し、春の切り戻しを経て再生した、彫刻的でユニークな樹形を楽しむ仕立て方です。長く伸びた茎の先に小ぶりの葉牡丹がいくつも付く姿は、まるで植物が踊っているかのようで、一鉢あるだけで空間をおしゃれに演出してくれます。
作り方の基本は、前述の切り戻しを行った株を、そのまま夏越しさせて育てるだけ。切り口の下から伸びてきた複数の脇芽が、夏を通して光を求めて自由に伸長することで、自然とくねくねとした面白い茎の形が作られていきます。
踊り葉牡丹を成功させる夏の管理
踊り葉牡丹作りで最も重要なのが、夏の間の管理です。
置き場所
前述の通り、夏の強い直射日光は葉焼けや株の衰弱の原因になります。午前中だけ日が当たる場所や、木漏れ日が差すような明るい日陰が最適です。
水やりと肥料
高温多湿に弱いため、水やりは控えめにします。土の表面が乾いてから1〜2日待ってから与えるくらいで十分です。ただし、夏の成長期でもあるため、月に2回程度、薄めた液体肥料を与えて体力をサポートします。
病害虫対策
夏はアブラムシやコナガの幼虫などが発生しやすくなります。定期的に葉の裏などをチェックし、見つけ次第駆除しましょう。
支柱立て
茎が長く伸びてくると、自重で倒れやすくなります。必要に応じて支柱を立てて、好みの樹形になるよう軽く誘導してあげましょう。この手間が、秋以降の美しい姿に繋がります。
来年のための種の取り方と保存法

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葉牡丹の花が咲き終わった後、種を収穫(自家採種)することで、園芸のサイクルを完結させ、翌年の楽しみに繋げることができます。
花が終わると、緑色で細長い豆のサヤのようなものができます。これが種が入っている莢(さや)です。このサヤが徐々に成熟し、緑色から黄色、そして薄茶色へと変わり、乾燥してきたら収穫のタイミングです。収穫が早すぎると種が未熟で発芽せず、逆に遅すぎるとサヤが自然に弾けて、大切な種が地面にこぼれ落ちてしまうので、見極めが重要です。
種の収穫から保存までの詳細手順
- 収穫
サヤが十分に色づいたら、花茎ごとハサミで切り取ります。バラバラと収穫するより、茎ごと刈り取った方が後の作業が楽になります。 - 乾燥
収穫した花茎を、逆さまにして大きな紙袋に入れます。そして、雨の当たらない、風通しの良い軒下などで2〜3週間吊るしておきます。この「追熟」と「乾燥」の工程が、発芽率の良い種にするためのポイントです。 - 採種(脱穀)
サヤがカラカラに乾いたら、紙袋の上から手で揉んだり、袋を振ったりすると、サヤが割れて中の黒く丸い種がこぼれ落ちてきます。 - 選別と保存
袋の中身をお皿などの上にあけ、息をそっと吹きかけて細かいゴミ(サヤの破片など)を飛ばします。残った種を、乾燥剤(お菓子などに入っているシリカゲルで可)と一緒にお茶パックや小さな封筒に入れ、さらに密閉できる容器(チャック付きポリ袋や瓶など)に入れて、冷蔵庫で保管します。
注意ポイント
F1品種の種について
現在市販されている葉牡丹の苗や種の多くは、優れた性質を持つよう意図的に交配されたF1(一代交配種)です。F1品種は優れた性質を持つ反面、そこから採れた種(F2世代)は、親と同じ性質が揃って現れないとされています。色や形が変わることもありますが、これは失敗ではなく、自家採種ならではのサプライズです。「今年はどんな葉牡丹が咲くかな?」と、その変化を楽しむのもまた一興と言えるでしょう。
葉牡丹の種まき時期についてのまとめ
この記事のまとめ
- 葉牡丹の種まき時期は温暖地で7月中旬から8月中旬が基本
- 美しい発色のためには秋の低温に当てることが重要
- 種まきは清潔な用土を使い、覆土はごく薄くするのが成功のコツ
- 発芽したらすぐに日光に当て、徒長を防ぐ
- 水やりは「乾かし気味」を意識すると丈夫な株に育つ
- 種まきが遅いと株は小さくなるが寄せ植えなどで楽しめる
- ミニ葉牡丹は遅まきや小さなポットでの栽培が基本
- 観賞期が終わった株を植えっぱなしにすると春に花が咲く
- 花が終わった後に切り戻しをすると脇芽が伸びる
- 切り戻した茎は挿し木に利用して増やすことができる
- 切り戻し後に伸びた脇芽を育てると踊り葉牡丹になる
- 花後のサヤが茶色くなったら種の取り方のタイミング
- 採取した種は乾燥させて冷暗所で保管する
- F1品種から採った種は親と同じ姿になるとは限らない
- 種まきから種取りまで、葉牡丹のライフサイクル全体を楽しもう
葉牡丹の種まきは、一般的に7月中旬から8月中旬が最適な時期となります。なぜなら、発芽に必要な温度を確保しつつ、秋に美しく色づくための十分な生育期間を与える必要があるからです。
成功の秘訣は、清潔な用土で種を薄く覆い、発芽を確認したら間髪をいれずに日光へ移動させて、ひょろひょろとした徒長を防ぐ点にあります。また、あえて種まきを8月下旬以降に遅らせることで、寄せ植えに最適なコンパクトな株を育てることも可能です。
冬の観賞を終えた後も、春には可憐な花が咲き、切り戻しや挿し木、さらには種の採取まで、一つの株を余すことなく一年中楽しむことができます。この記事でご紹介したポイントが、あなたの葉牡丹栽培の一助となれば幸いです。