こんにちは。園芸の教科書運営者のめぐみです。
マリーゴールドの花が終わった後、そのままで良いのか、それとも来年のために種を取るべきか迷っていませんか。マリーゴールド 種取りに関する適切な時期や、カビを防ぐ保存のやり方、さらに自家採種での発芽率を上げる方法について知りたいというお声をよく聞きます。
せっかく綺麗に咲いた花ですから、枯れた後の種を上手に回収して、来年も楽しみたいですよね。この記事では、初心者の方でも簡単にできる良い種の見分け方から、種まきの前に水につけるべきかといったばらまきに関する疑問まで、分かりやすくお伝えします。
この記事のポイント
- マリーゴールドの種を取るベストな時期と天候の選び方
- 発芽率を高めるための徹底した乾燥と正しい保存の手順
- F1品種と固定種の違いによる自家採種での花への影響
- 失敗しない種まきのコツと水につける意味についての解説
マリーゴールドの種取りの基本!失敗しないための準備

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夏の太陽をたっぷりと浴びて、元気いっぱいに咲き誇ってくれたマリーゴールド。花壇を華やかに彩ってくれたお花が少しずつ枯れ始めていくのを見るのはちょっぴり寂しいものですが、実はそこからが新しい命を繋ぐサイクルの始まりなんです。
種取りを成功させるための第一歩は、植物の仕組みを理解してベストなタイミングを逃さないこと。ただ何となく花が枯れるのを待つのではなく、種が親株からたっぷりと栄養をもらってしっかりと熟成したサインを見極めることが一番の鍵になります。
市販されている種とは違い、ご自身で愛情を込めて育てた花から取る種には、ご自宅の環境に馴染んだ特別なパワーが秘められています。ここでは、生命力にあふれた元気な種を確実に確保して、翌年の春も綺麗なお花畑を作るための基本的な知識と、失敗しないための具体的なステップを一つずつ丁寧にご紹介していきますね。
最適な種取りの時期を見極める
マリーゴールドの種を取る時期は、花が綺麗に咲き終わってからです。
でも、花びらがしおれて枯れ落ちたからといって、すぐに摘み取ってしまうのは少し早すぎます。実は、花弁が茶色くなった後も、しばらくの間は親株から種へ向けて、炭水化物や脂質といった発芽に必要な栄養分(光合成産物)がせっせと送られ続けているからです。
この生理的な成熟のピークをじっくり待つことが、生命力あふれる種を取るための最初のステップになります。

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枯れた花に隠された熟成のサイン
マリーゴールドが種を作る過程は、朝顔のように実が大きく膨らんだり、タンポポのようにフワフワの綿毛ができたりしないため、見た目の変化が少なくて少し分かりにくいかもしれません。細長い針のような種が、お花の土台(花托)の中に隙間なくギュッと詰まって育つので、外側のサイズがほとんど変わらないんですよね。
では、どこを見て判断すればいいのでしょうか。
一番のポイントは、種子を包み込んでいる筒状のガク(総苞)の色です。この部分が緑色をしているうちは、まだ種に栄養が送られています。種取りのベストなタイミングは、ガク全体が完全に茶色く変色し、花首(茎と花の繋ぎ目)からポキッと折れて下を向いた時です。
茎が折れて花が下を向くのは、単に枯れて力尽きたからではありません。植物ホルモンの働きによって、親株から種への水分や養分の通り道を意図的に遮断したという、植物自身が出す種が完成しましたという明確な合図なんです。
同時に、下を向くことで降った雨水が大切な種の中に入り込まないように傘の役割も果たしています。マリーゴールドの生きるための見事な適応力には、本当に驚かされますよね。
晴れの日が続くタイミングを狙う
最適な状態まで熟成したことを確認したら、次に重要になるのが収穫する天候です。
絶対に雨の日の作業は避けてください。枯れた花やガクはスポンジのように水を吸いやすく、雨水を含んだままの湿った状態の種を取ってしまうと、鞘(さや)の中で一気に蒸れてしまいます。これが原因で、保存中にボトリティス菌(灰色かび病の原因菌)などのカビが爆発的に繁殖し、種が全滅してしまうことがよくあるんです。
理想的なのは、晴れの日が3〜4日続いた後の、お日様の光でしっかり水分が飛んだお昼過ぎから夕方前くらいの時間帯に作業することです。早朝は夜露で花がしっとり濡れていることがあるので、日中の湿度が十分に下がってからハサミを入れるのが、失敗しないための大切なコツですよ。
良い種の見分け方のコツは?

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完全に枯れて下を向いた花をハサミで切り取ったら、いよいよ種を取り出していきます。
指先で枯れた花弁とガクを外側にそっと押し広げてみてください。お花の土台となっている硬い部分(花托)から引き抜くようにばらばらに分解すると、一つの花から数十個から百個近い種がパラパラと出てきます。
白と黒のツートンカラーをした、細長い針のような独特の形をしていますよね。初めて見る方は、いつも見慣れている丸い種とは違う姿に少し驚かれるかもしれません。でも、この中には発芽するパワーをたっぷり秘めた元気な種と、残念ながら育ちきらなかった種が入り混じっているんです。
発芽率を左右する選別作業
翌春の発芽率をグンと上げるためには、取り出した種をそのまま保存するのではなく、選別作業を行うことがとても大切です。
見分ける一番のポイントは、色が濃くてツヤがあり、指で軽くつまんだ時に中身がしっかりと詰まっているような芯の硬さを感じるかどうかです。黒や濃い茶色をしている部分は、植物の赤ちゃんとなる大切な栄養が詰まっている場所なんですよ。また、まっすぐな形をしていて、変に折れ曲がっていないかどうかも元気な証拠としてチェックしてくださいね。
逆に、中身がスカスカで細すぎる未熟な種(これは園芸用語でしいなと呼ばれます)や、全体的に白っぽくて色が薄いものは、発芽するためのエネルギーが足りていないので迷わず取り除いて捨てましょう。
さらに最も注意していただきたいのが、黒ずんでカビが生えかかっている種です。もったいないからとカビの兆候があるものを一つでも一緒に保管してしまうと、そこから見えない菌糸が広がってしまい、一緒に保存した元気な種まで全滅させてしまう危険があります。この少しの選別作業を丁寧に行うだけで、翌年の発芽の勢いが全く違ってきますよ。
メモ
選別作業をする時は、白い紙や紙皿の上に種を広げると、ツートンカラーの濃淡や不良な種がくっきりと見えやすくなります。ピンセットを使いながら、じっくりとより分けていくのも、種取りならではの楽しい時間ですよ。
確実な種取りの方法と詳しい手順
実際に種を取る手順は一見シンプルに見えますが、植物の組織を傷つけないように丁寧に行うことが成功の大きなコツです。ここでは、翌年の発芽を確実にするための、具体的な収穫ステップを詳しくお伝えしますね。

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清潔なハサミでの切り出し
まず準備していただきたいのが、アルコール消毒などで除菌した清潔な園芸用ハサミです。種が完成した際の花首は乾燥して非常に脆くなっていますが、一方で茎の繊維は意外としっかり残っています。手で無理にちぎろうとすると、茎の皮が長く剥けてしまったり、その衝撃で種を包むガク(総苞)がバラバラに崩れて、大切な種を地面にばら撒いてしまうリスクがあるんです。
収穫の際は、花首から数センチ下の部分にハサミを入れ、そっと支えるようにして切り取りましょう。清潔な道具を使うことで、切り口からの雑菌の侵入を防ぐ効果もありますよ。収穫した花が複数ある場合は、風で飛ばされないよう深めの紙皿やボウルなどに集めておくのが私のおすすめです。
花殻の分解と「命のバトン」の取り出し
切り取った花殻から種を取り出す作業は、まるで宝探しのような楽しさがあります。まず、茶色くなったガクの先端から覗いている、枯れた花びらを指先で優しくつまんでみてください。そのまま垂直にゆっくりと引き抜くのが、中にある種を傷つけないポイントです。
すると、花びらの根元に付着するようにして、黒と白のツートンカラーをした細長い棒状のものが現れます。これがマリーゴールドの種です。
ガクの内部はちょうど筒状のマンションのようになっていて、中央の花托(かたく)という土台部分に、これらの種が放射状にぎっしりと差し込まれている構造になっています。適切な時期まで完全に熟成していれば、軽く触れるだけでパラパラと土台から外れてくれるはずですよ。
物理的なダメージを最小限に抑える
この時、特に注意していただきたいのが種の取り扱いです。
マリーゴールドの種は非常に細長いため、横方向からの力に弱く、無理に折り曲げると簡単にポキッと折れてしまいます。あの細い種の中には、将来「根」や「芽」になる大切な胚(はい)が含まれています。折れたり潰れたりして細胞が壊れてしまうと、いくらその後の保存状態が良くても芽が出ることはありません。
「今まで綺麗な花を咲かせてくれてありがとう」という感謝の気持ちを込めて、優しく解体してあげてくださいね。
こうして丁寧にばらばらに分解し、目に見える大きなゴミや枯れた花びらの破片を取り除いたら、いよいよ次の選別作業へと進んでいきます。この丁寧なひと手間が、来年の春の力強い芽吹きを支える大切な土台になるんですよ。
カビを防ぐための乾燥のポイント
花から取り出したばかりの種は、表面がカサカサに乾いているように見えても、実は種の内部には生命を維持するための微量な水分がたっぷり残っています。これを植物学では自由水と呼んだりするのですが、この水分を含んだままの状態で密閉容器に入れてしまうと、大変なことになります。
種は生きているのでわずかに呼吸をしているのですが、密閉空間で呼吸とともに水分が放出されると、逃げ場を失った湿気が容器の内側に結露となって付着します。すると、その水分をエサにして灰色かび病などの原因菌があっという間に繁殖し、大切な種がたった数日で真っ白なカビだらけになって全滅してしまうんです。
乾燥工程は、来年の発芽率を決定づける最重要ポイントと言っても過言ではありません。

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2〜3週間の徹底乾燥と環境づくり
保存の前に、まずはこの厄介な内部の水分を安全なレベル(休眠に適した状態)までしっかり乾燥させることが何よりも大切です。湿気をよく吸ってくれる新聞紙や、風通しの良い目の細かいザルなどの上に、種が重ならないように薄く広げます。
この時、早く乾かしたいからといって直射日光に当てるのは絶対にNGです。急激な温度上昇(特に35度以上)や強い紫外線にさらされると、種の中にあるデンプンやタンパク質が変性してしまい、熱によって大切な細胞が死んでしまう危険性があるからです。
必ず、直射日光の当たらない風通しの良い涼しい日陰を選んで置いてくださいね。そよ風が種の周りの湿った空気を吹き飛ばしてくれる場所がベストです。
乾燥完了を見極める「ポキッ」のサイン
乾燥にかける期間は、だいたい2〜3週間という十分な期間をとって、ゆっくりと自然乾燥させます。少し長く感じるかもしれませんが、この時間をかけることで、種はダメージを受けることなく安全に深い休眠状態へと入っていくことができます。
中まで完全に乾燥したかどうかを見極めるには、指先の感覚を頼りにする折れテストが一番確実です。マリーゴールドの種を両端から指でつまんで、軽く曲げようとしてみてください。
まだ内部に水分が残っているとグニャッと柔らかく、しなるのですが、完全に乾ききると、抵抗なくポキッと簡単に折れるようになります。このもろさと硬さを感じるようになれば、中まで完全に乾燥した明確なサインです。ここまでくれば、もうカビの心配はありませんよ!
種を長持ちさせる保存のコツは?
2〜3週間の乾燥工程が無事に終わったら、いよいよ来年の春に向けた保存に入ります。
せっかくしっかり乾かした種も、保存する環境を間違えてしまうと、発芽する力がどんどん弱まってしまいます。実は、種は休眠している間も完全に活動を停止しているわけではなく、生きた生命体として微弱な呼吸を続けているんです。
保存環境の温度や湿度が高いと、この呼吸の量が増えてしまい、種の中に蓄えられている大切な栄養分(デンプンや脂質など)を無駄に消耗して寿命が尽きてしまいます。ここでは、種のエネルギーを温存し、ぐっすり眠らせておくためのコツをご紹介しますね。

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保存容器の使い分けと選び方
ご自宅の環境や、種が本当に中まで乾燥しきっているかどうかの確証に合わせて、最適な保存容器を選んでみてください。
| 保存容器 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 密閉容器(瓶やタッパー、チャック袋)+乾燥剤 | 外部の湿気や酸素を完全に遮断できるため、長期間にわたって高い発芽率を維持できる。 | 種の乾燥が不十分だと、内部で水分が逃げ場を失って結露し、致命的なカビが爆発的に発生するリスクがある。 |
| 通気性のある紙袋やクラフト封筒 | 微細な隙間から呼吸ができるため、少し湿気が残っていても結露や蒸れによるカビのリスクを減らせる。 | 周囲の湿度が極端に高いと種が湿気を吸ってしまう。シバンムシなどの小さな虫が侵入するリスクがある。 |
もし乾燥具合に少しでも不安がある場合は、まずは紙袋に入れて様子を見るのが安全な選択になります。
温度管理と冷蔵庫での結露対策
保存場所は温度変化が少なく、涼しい暗所が鉄則です。
一般家庭の環境なら、冷蔵庫の野菜室が最も温度(5〜10度程度)が安定していてベストな場所になります。種子の世界には、保存温度や湿度が低いほど種の代謝が抑えられ、寿命が長持ちするという明確な法則があるんですよ(出典:農研機構『貯蔵庫で保存された作物の種子寿命』)。ですので、冬場でも暖房が効いた暖かい部屋に置きっぱなしにするのは避けてくださいね。
ただし、ここで一つだけとても重要な注意点があります。
春になっていざ種まきをする時、冷蔵庫から出してすぐに冷たいまま蓋を開けてしまうと、急激な温度差によって種や容器の内側に結露(水滴)が発生してしまいます。種が濡れて傷む原因になるので、冷蔵庫から出したら必ず未開封のまま室温に数時間置いて、温度をしっかりと馴染ませてから開けるようにしてください。
メモ
密閉容器に入れる乾燥剤は、お菓子や海苔などに入っているシリカゲルを再利用すれば十分に効果を発揮してくれます。また、保存袋には採種した年と品種名、または花の色を油性ペンで書いておくと、翌春に迷わずに済みますよ。複数種類のマリーゴールドを育てている場合は特におすすめです。

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マリーゴールドの種取り後!来年も綺麗に咲かせるための知識

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秋の終わりに一生懸命取って、大切に冬越しさせたマリーゴールドの種。無事に春を迎えられたら、いよいよその「命のバトン」を土へと繋ぐ、翌年の栽培に向けたワクワクするステップの始まりです。
自家採種した種からの栽培は、市販の種を買ってきてまくのとは少し違った、特有の注意点や面白さがあります。例えば、親株と同じ花が咲かないかもしれないという遺伝の不思議や、発芽率を落とさないためのちょっとした工夫、そしていざ種をまく時の事前準備など、知っておくとさらにガーデニングが楽しくなる知識がたくさんあるんですよ。
ここからは、大切に保存した種が春の温もりを感じてしっかりと目を覚まし、再びあなたのお庭やプランターを色鮮やかに彩ってくれるように、来年も綺麗に咲かせるための具体的な栽培テクニックを詳しく見ていきましょう。
F1品種と固定種の違いについて
ホームセンターや園芸店で買った見事なマリーゴールドから種を取ってまいたのに、「翌年は全く違う花が咲いてしまった」「背丈がバラバラになってしまった」という経験はありませんか?
実はそれ、あなたの種取りのやり方が悪かったわけではないんです。現在市販されているマリーゴールドの種や苗の多くは、F1ハイブリッド(一代交配種)と呼ばれる特別な品種だから起こる現象なんですよ。
雑種強勢とメンデルの法則の不思議
F1ハイブリッド品種とは、見栄えの良さ、均一な草丈、病気への強さなどを引き出すために、種苗メーカーさんが異なる優秀な系統を人工的に交配して作り出したエリート品種です。この交配によって、F1世代の植物は「雑種強勢(ヘテロシス)」と呼ばれる現象を起こし、親の良いとこ取りをして一代限りの見事な花を咲かせます。
しかし、このF1品種から種を取って(自家採種して)翌年に育てると、中学校の理科で習った「メンデルの法則」によって、遺伝子の組み合わせが劇的にシャッフルされてしまいます。その結果、元の親株の優良な特徴に隠れていた多様な遺伝子が表に出てきて、違う色や形の花が咲いたり、八重咲きが一重咲きになったりするんです。これが一般的に「先祖返り」などと呼ばれている現象の正体です。
先祖返りを楽しむか、景観を揃えるか
このように、F1品種から取った種(F2世代と呼びます)で形質が分離するのは、DNAの振る舞いによる生物学的な必然です。決して種取りに失敗したわけではないので安心してくださいね。
| 品種の種類 | 次世代(採取した種)の咲き方 | おすすめの楽しみ方 |
|---|---|---|
| F1ハイブリッド | 遺伝子がシャッフルされ、親とは違う多様な色、形、背丈の花がバラバラに咲くことが多い。 | どんな花が咲くか分からないという福袋的な多様性として、お庭のナチュラルな景観を楽しむ。 |
| 固定種(在来種) | 形質が安定しており、親株とほぼ同じ特徴を持った花が翌年も咲く。 | 花壇のデザインを統一するために、毎年絶対に同じ背丈、同じ色の花を揃えて咲かせたい場合に選ぶ。 |
もし違う花が咲いてしまっても、「今年はどんな顔を見せてくれるかな?」とワクワクしながら見守るのも、自家採種ならではの大きな醍醐味です。ご自身のお庭のコンセプトに合わせて、F1からの種取りを楽しむか、あらかじめ固定種を選ぶかを戦略的に考えてみるのも、ガーデニングの奥深い面白さですよ。
自家採種の発芽率を高める工夫

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ご自宅で大切に育て、自家採種した種の発芽率を翌年の春まで高く保つためには、収穫の時期においてもう一つだけ、絶対に気をつけていただきたいポイントがあります。それは、秋が深まって本格的な寒さが到来し、霜が降りる季節になる前までにすべての種取り作業を終えるということです。
マリーゴールドはもともとアメリカ大陸などの温暖な気候を原産としているため、寒さに対してはとても弱い植物なんですよね。
初霜がもたらす細胞内凍結の脅威
秋の終わり頃に気温が氷点下近くまでグッと下がり、花壇に霜が降りると、植物の組織や、まだ完全に乾ききっていない種の内部に残っている水分が凍ってしまいます。すると、種の中に目に見えない小さな氷の結晶ができてしまうんです。
この尖った氷の結晶が、種の中にある大切な細胞の膜を物理的に突き破って壊してしまいます。これを少し専門的な言葉で細胞内凍結と呼ぶのですが、一度でもこの致死的なダメージを受けて細胞が壊れてしまった種子は、その後にいくら完璧な環境で保存したとしても、発芽する能力を完全に失ってしまいます。
一生懸命取ったのに春にまいても全く芽が出ないという悲しい失敗の原因は、実はこの霜に当たってしまったことにあるケースが少なくありません。そうならないためにも、秋が深まってきたら天気予報の最低気温をこまめにチェックして、初霜が降りる前までには計画的に収穫を済ませてしまうことが大切です。
注意ポイント
天気予報で急な寒波が来そうなのに、肝心の花がまだ完全に茶色く枯れきっていないという緊急事態もあるかと思います。そんな時は諦めずに、花から数センチ下の茎ごと長めに切り取ってしまいましょう。そして、暖房の風が直接当たらない室内の安全な場所に置いておくことで、茎に残った栄養を使ってゆっくりと追熟させながら乾燥させることができます。これが大切な種を守るための安全なレスキュー対策になりますよ。
発芽前に種を水につける裏技
冬を越して春になり、いざ大切に保存しておいた種をまこうという時、「少しでも早く、確実に発芽させるために、種を水につけてからまいた方がいいのかな?」と迷うことはありませんか。園芸の裏技としてよく耳にする方法ですよね。
マリーゴールドには浸水処理は不要
結論からズバリ言うと、マリーゴールドの種は事前に水につける必要はありません。
朝顔やオクラのように、外側の殻がとても硬い種(園芸用語で硬実種子と呼びます)の場合は、一晩水につけて皮を柔らかくして発芽のスイッチを入れる「浸水処理」が非常に有効です。
しかし、マリーゴールドのあの細長い針のような種は外皮がとても薄く、土の水分を極めてスムーズに吸収しやすい性質を持っています。元々の発芽率も非常に高い植物なんです。
良かれと思ってコップの水などに長時間つけすぎてしまうと、かえってトラブルの原因になります。
種は休眠から目覚める際に激しく呼吸を始めるのですが、水没状態が続くと酸素を取り込めずに窒息してしまいます。さらに、水分を限界まで吸ってブヨブヨになった種を土にまくと、土の中の雑菌(嫌気性細菌など)の標的になりやすく、芽が出る前に腐って溶けてしまうリスクが急激に高まるんですよ。
正しい事前の準備としては、種を濡らすのではなくまく場所の土をあらかじめジョウロでしっかりと湿らせておくことです。適度に湿った土の上に乾いたままの種をまき、上から優しく水をかけてあげれば、マリーゴールドは自分に必要な分だけの水分を自ら上手に吸い上げて、力強い芽を出してくれますよ。
花壇や鉢への種のばらまき手順は?

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ご自身で採集した種がたくさんあるなら、小さな育苗ポットに一粒ずつまくのではなく、花壇や大きめのプランターに直接「ばらまき」をするのが断然おすすめです。種取りをがんばってたくさん集めたからこそできる、とっても贅沢で手軽な方法なんですよ。一斉に芽吹けば、まるでお花畑のような自然でボリュームのある景観を楽しむことができます。
ふかふかのベッドを作る事前の土作り
まずは、種をまく場所の土を軽く耕して、発芽したばかりの細い根がスッと張りやすいようにふかふかにしておきましょう。表面を平らにならしたら、種をまく前にあらかじめジョウロでたっぷりと水をかけ、土をしっかりと湿らせておくのが失敗しない秘訣です。
乾いたフカフカの土の上に直接種をまき、後から勢いよく水をかけてしまうと、マリーゴールドのあの軽い種が水流でプカプカと浮き上がり、一箇所に固まってしまったり、逆に土の奥深くに沈み込んでしまったりするからです。
好光性種子を意識した薄がけのコツ
土の準備ができたら、種同士が極端に重なりすぎないように意識しながら、パラパラと均等にまいていきます。風で飛ばされやすいので、手元をなるべく低くして作業してくださいね。
ここで一番重要なのが覆土(ふくど:土をかぶせること)の厚さです。マリーゴールドの種は、太陽の光を感じることで発芽のスイッチが入りやすくなる好光性種子(こうこうせいしゅし)に近い性質を持っています。
そのため、土を分厚くかぶせすぎて光を完全に遮断してしまうと、いつまでたっても芽が出ません。種がうっすらと透けて見えるか見えないか程度の、ごく薄い土(2〜3mmほど)をサッとかぶせるだけで十分です。
優しい水やりと間引きのタイミング
土をかぶせた後は、種が動いてしまわないようにハス口(シャワーノズル)の細かいジョウロで、霧雨のように優しく水を与えます。発芽するまでの数日間は、土の表面が完全にカラカラに乾ききらないように注意深く見守ってあげてください。
ばらまきが成功すると、元気な芽がたくさん密集して生えてきます。
少しもったいない気もしますが、本葉が2〜3枚になった頃に、ひょろひょろとした弱そうな芽を間引いて、株同士の間隔を少し空けてあげましょう。そうすることで風通しが良くなり、残した一つ一つの株ががっしりと大きく育ち、病気にも強くなりますよ。
成功するマリーゴールドの種取りの総括

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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
マリーゴールドの種取りは、花首が下を向くまでじっくり待つこと、雨を避けて収穫して2〜3週間しっかり乾燥させること、そして冷蔵庫などの冷暗所で保存すること、この基本のポイントさえ押さえておけば初心者の方でも簡単に成功させることができます。
自分で一生懸命取って大切に保存した種から、春に小さな芽が出た時の喜びは本当に格別なものです。親株とは少し違う顔を見せてくれるかもしれないワクワク感も一緒に楽しみながら、ぜひ今年の秋はマリーゴールドの種取りにチャレンジしてみてくださいね。
なお、栽培環境や気象条件によって生育状況は異なりますので、今回ご紹介した時期や目安はあくまで一般的なものとしてご参考になさってください。ご自宅の環境に合わせて植物の様子を観察しながら、素敵なガーデニングライフを楽しんでいただければ幸いです。
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